雇止め・バックラッシュ裁判で

原告の請求棄却  

大阪地裁

宮下奈津子(ファイトバックの会@京都)


掲載記事


 大阪府豊中市にある「とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ」の館長だった三井マリ子さんが、不当に雇止め(やといどめ)されたとして市などに損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁は9月12日、原告の請求を棄却した。男女平等の流れを阻もうとするバックラッシュを、司法の場で初めて取り上げた画期的裁判であるが、裁判長は「反対勢力に屈したとは認められない」と、これを否定した。

判決後の記者会見で原告と弁護団は、「到底認められない」と、悔しさをにじませた。

弁護団は、「男女平等を阻む勢力に屈した豊中市と財団が、非常勤館長をやめさせ、常勤への採用を拒否した」「2004年2月22日に常勤館長の採用面接をしたが、その前に桂さんに『あなたしかいない』と言った人権文化部長が選考委員会に入っていた」「更新に関する『日立メディコ事件』の判例も無視した。期待権を法的権利とはいえないとしている後退した判決だ」「全体として、豊中市のおかしいことは多くある、と認めながら、慰謝料にまでは値しないとしている」等判決の不当性を指摘した。

 原告は、「情報をきちんと知らされず、労働権を奪われた。在任中、市からは批判や問題の指摘はなかった」「2000万人はいるという非常勤職の権利擁護にマイナス」、「この判決はバックラッシュを加速させかねないと思う」と訴えた。

 事案が複雑な分、判決は長文である。しかし、そこには、原告が提訴にいたった苦しみを理解していると思える記述は片鱗もない。あるのは行政側への配慮である。

 選考委員会について『公正さに疑念』として不公正を明確に認めず、法令・規則違反の予算要求を『手続きを急いでいたことによるものと推察され』と、市が主張してもいないことを認めていること等、不正を働いた行政を裁判所が言葉を補って、かばっているようなものだ。パート労働法指針についても、極めて限定的に解釈し、均等待遇の流れに逆行するものである。

三井さんの控訴により舞台は高裁に移った。司法が行政の追認をしている限り、勝訴への道は険しい。しかし現状を変えたいという強い気持ちを持って私は原告を支援していく。それは三井さんの経験は多くの女性、非正規職が経験してきたことであり、その無念さを共有しているからに他ならない。今後も多くの方に注目・支援をお願いしたい。

 館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会(ファイトバックの会) URLはこちら

(出典:『I 女のしんぶん』2007年10月10日号)
『I 女のしんぶん』は日本婦人会議の機関誌で月2回発行




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