館長雇止め・バックラッシュ裁判提訴から1年 

鈴木 誠子

コミュニティ・エンパワーメント東大阪


  とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」の初代館長であった三井マリ子さんが訴訟をおこして満1年の12月17日に、大阪のドーンセンターで1周年を迎えての集会があった。実に熱く、そして楽しく、元気に満ちた内容だった。
 常任弁護団12名(弁護団は38名)のリーダーである寺沢勝子弁護士より「この裁判が問いかけるもの」、そして常任弁団の1人である紀藤正樹弁護士より「バックラッシュ勢力の黒幕」と題してお話と参加者との意見交換があった。
 一部の最後に原告の三井マリ子さんから熱いスピーチがあり、私は提案を含めたそのスピーチに熱く感動した。三井マリ子さんの裁判のゆくえは広く全国に注目されている。(S.S)



 原告 三井マリ子さんのスピーチ内容

『女性労働の搾取を告発する日」を開こう

 『第二の性』を書いたボーヴォワールは1972年5月、パリの大きなホールで、ある重要な会を開きました。その会は、後にフランスの女性の生き方を根本的に変えることにつながりました。それは『女性に対する犯罪を告発する日』と題された集会です。
 避妊、中絶や育児の問題を取り上げた大イベントでした。カソリックの国フランスは、当時、中絶は犯罪でした。10人ほどで調査委員会をつくり、多くの証人を集めて喚問して、女性への犯罪的行為を次々に明らかにしました。この方法は、故・松井やよりさんが開いた「女性国際戦犯法廷」と似ています。そのイベントの最大の目的は、女性には生む生まないを決める権利があることを社会に訴えることでした。数年後、フランスは、人口妊娠中絶を合法化しました。
 ボーヴォワールは、『女性に対する犯罪を告発する日』に先立ってこんなことを言っています。「将来は、会社員や工場労働者や主婦に対する労働搾取をとりあげて、『女性労働の搾取を告発する日』を開催するつもり」
 それが実行されたかどうかは私にはわかりません。
 ボーヴォワールが「女性労働の搾取を告発する日」を開くと宣言してから30年以上がたちました。いま日本でも、女性は自分たちの働きが搾取されていることに、怒りの声を上げ始めました。セクハラを訴えたら辞めさせられた女性、賃金を男性の半分に値踏みされる女性、正社員以上の働きをしてもすずめの涙ほどしかもらえないパート社員。私の裁判は、そんな現象の一つだと思います。私は雇止めになって怒りました。そして大勢の女たちも私以上に怒ってくれました。その怒りの炎がさらに私をたきつけ、それが昨年の今日、12月17日、提訴に踏み切らせたのです。そして、その炎はさらに大きくなって、本日の集まりになった、というわけです。
 万障くりあわせてここに集って下さったみなさん、私は、みなさんと、いっしょに、近い将来、ボーヴォワールが言った「女性労働の搾取を告発する日」と言う名のイベントを日本で開催することを提案します。提訴1周年の今日12月17日のこの集まりを、「女性労働の搾取を告発する日」という集会をする覚悟を決める会にしたいと思います。証人は日本中に大勢いるはずです。きっと今日、ここにいらっしゃるあなたも、あなたもそうだと確信しています。女性の怒りをはっきりと示すこと、それこそ、世の中を変える最大の力だと思います。


 

(出典:『ふれあいらんど』季刊誌新年号掲載(2006年1月4日発行))


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