意見陳述(草稿)

2008年2月26日
三井 マリ子 

  昨秋、大阪地裁の山田裁判長は、雇用継続を拒否した豊中市らに損害賠償を求めた私の訴えを棄却しました。

 豊中市や財団は嘘に嘘を重ねて私の人生を翻弄しました。私は、その人間としての不誠実さに直面して苦しみました。体中に湿疹ができました。眠れない夜が続きました。そして職を失い収入がなくなりました。ところが、一審判決は、その苦しみを癒すどころか倍増させるものでした。

 この私の苦しみは、この日本社会において軽んじられてきたおびただしい数の働く女たちの苦しみであり、大勢の非常勤職の人たちの苦しみでもあります。

 私の首斬りの背後には、バックラッシュ勢力の攻撃があります。その勢力は、個人として女性が生き生きと生きていける社会が嫌いです。男女平等を目指す言動も嫌いなのです。

 その勢力に属する人々は、男女平等を求めて活動する人々やその著作までも執拗に攻撃します。その手法は、事実を歪曲・すり替えしたり、根も葉もないことをでっちあげたり、誹謗中傷をしたりします。それをチラシ、噂、メディアで広めます。たとえば私に関しては、「すてっぷの館長は、講演会で専業主婦は知能指数が低い人がすることで、専業主婦しかやる能力がないからだと言った」というとんでもない嘘を、市議会議員が、噂と称して流しました。

 こうした攻撃は豊中市だけではありません。日本の津々裏々で見られます。日本各地で男女平等推進施策を踏み潰しては快哉を叫んでいます。

 そのような攻撃を受けて疲弊している多くの人々に対しても、一審判決は、さらなる打撃を与えたのです。

 ですから、私は、このまま黙って引き下がるわけにはいかないのです。

 2000年、私は全国公募に応募した60人の中から選ばれ、豊中市の男女共同参画推進センターの初代館長に就任しました。このセンターは「すてっぷ」と呼ばれました。豊中市民の長い間の夢でした。「男女平等の社会をつくることは国の最重要課題」とうたう男女共同参画社会基本法の賜物でもありました。

 私は、館長としてスタッフの仕事の下支えをし、「豊中にすてっぷあり」と言われる、その日を目指して、一生懸命に働きました。すてっぷから徒歩2、3分の地に住まいも移しました。こうした私の仕事は、市や財団から評価されこそすれ批判されたことはありませんでした。

 しかし3年後、豊中市は、「組織強化」の美名のもとに、2004年4月からは非常勤館長職をなくして館長ポストを常勤化すると言い出しました。そうなった場合、「第一義的には三井さんです」と言って私をだまし、裏では「三井は3年で辞めると言った」「三井は常勤はできないと言った」との嘘をふりまき、後任館長を密かに決めていたのです。

 候補者10人のリストが極秘に作成され、2003年10月には市長にだけ見せて、「それで当たれ」という市長命令の下、候補者打診が進められ、12月には次期館長がひそかに決まっていたのです。

 全国からの抗議の声や、私が「常勤館長をやる意思がある」と表明したこともあって、2004年2月、市は採用試験をすることに決めました。すてっぷ館長として働き続けたかった私は一縷の望みをかけて受験をしました。しかし私は、不合格とされ、2004年3月31日で豊中市を追われました。

 その採用試験官には、後任館長探しに狂奔していた市の人権文化部長が入っていました。この不公正さを1審は認めております。しかし、慰謝料を支払わないといけない程の違法性を認めることはできないと、損害賠償は否定されました。

 この判決を聞いた私は、「10発殴られたら違法、と言ってやってもいいが、5,6発だろ、我慢しろよ」と裁判官から言われたような気持になりました。

 女性の人権擁護と男女平等の推進を市民の先頭に立って担うべき豊中市が、女性の人権擁護と男女平等施策を誠実に実行してきた女性センター館長を、嘘まみれの陰湿な手法で排除したのです。使い捨てたのです。そしてそのことで、私は、精神的にも経済的にも、計り知れない打撃を受けました。だのに、なぜ、それが違法にならないのでしょうか?

 裁判長、最後に申し上げます。週2,3日出勤の館長職では運営上問題があるなどと理由をこじつけて、市は非常勤館長の私を排除しました。しかし、私の後任の常勤館長は「組織強化になっていない」と法廷で証言し、2007年3月31日付けで辞職しました。こうして、すてっぷは、常勤館長の休職期間を入れると館長職不在のまま1年以上が過ぎました。今日、2月26日現在も館長はいません。

 まさに、バックラッシュ勢力の狙い通りのことが、すてっぷで起きているのです。この一事をもってしても、豊中市の言う組織強化なるものは、私を排除するための単なる方便だったといえると思います。

 控訴審の公正なる審判を切に願い、意見陳述を終えます。

(お断り:以上は陳述のための草稿であり、法廷で述べたとおりではありません)

裁判提出文書

原告から


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