■バックラッシュ(男女平等への逆流)年表

 この年表は、三井マリ子著「使い捨てされてたまるか! 豊中市のすてっぷ初代館長雇止め・バックラッシュ裁判」(『おんなの叛逆』)の注釈として作成されたものです。

 バックラッシュ(Backlash 逆流、逆風、反動)と呼ばれる男女平等への逆行の動きは世界中で起こっています。日本におけるバックラッシュ勢力は、男女平等を敵視し、旧来の固定的性別役割にこだわり、主として議員質問という形をとって行政に圧力をかけてきます。その動きを2000年からマスコミやミニコミ報道をもとにまとめたものです。上記著作とともにお読みくださるようにお願いいたします。


バックラッシュ(男女平等への逆流)年表

年月 できごと
00年 2月 東京都議会で民主党の土屋たかゆき議員(「教育再生地方議員百人と市民の会」)が東京女性財団作成の『ジェンダー・チェック』を不適切と批判。都は「趣旨が十分伝わらなかった表現があった」と答弁
02年 4月 衆議院特別委員会で山谷えり子議員(民主党男女共同参画委員会副委員長、日本会議推薦)が『未来を育てる基本のき』(日本女性学習財団発行)を行き過ぎと批判。産経新聞が「行き過ぎ性差解消、日本人の美意識否定」とトップ記事で報道
02年 5月 衆議院文部科学委員会で山谷えり子議員が『思春期のためのラブ&ボディ BOOK 』(母子衛生研究会発行)はセックスを安易にとらえる記述が目立つ、 ピルのメリットを強調しすぎと批判し回収をせまる
02年 6月 山口県宇部市で男女共同参画推進条例制定。審議会答申にあった「個人の尊厳が重んぜられること」は「男らしさ女らしさを一方的に否定することなく男女の特性を認め合い、互いにその人格と役割を認めると共に、尊厳を重んじあうこと」に、「個人の尊厳」は「らしさの尊重」に変えられた。「積極的改善措置」に関する規定は削除
02年 6月 「行き過ぎたジェンダーフリー教育や性教育から子どもを守る」とし、民主党議員78人が「健全な教育を考える会」を結成
03年 2月 山谷えり子衆議院議員は国会で、固定的性役割を助長する表現を使わないようにと書かれた岡山県新見市などの条例を「表現の自由の侵害」とし、責任者を国会に参考人招致すべきと発言
03年 2月 大阪府豊中市、男女共同参画推進条例案の上程を断念
03年 3月 千葉県、自民党によって継続とされてきた千葉県男女共同参画促進条例案が3度目の継続に。4月に県議選挙となり結果的に廃案
03年 3月 秋田県は公文書でジェンダーフリーという表現を見合わせることに決定
03年 4月 新潟県の小学校校長が「男女混合名簿などはマルクス主義フェミニズムに基づいており、思想教育につながる」と男女別名簿に戻す
03年 7月 鹿児島県議会がジェンダーフリー教育に反対する陳情請願を採択
03年 9月 石川県議会で宮元陸議員は「ジェンダーフリーは生殖器以外の男女の性差を認めないという危険な思想だ」。県文化局長は「県が新たに作成する文書でジェンダーフリーの使用は控えます」
03年10月 石川県議会は男女共同参画推進条例の運用に「ジェンダーフリーと称する過激な思想運動に利用されてはならない」とする請願を採択
03年10月 徳島県議会で「男女の区別を一切排除しようとする立場は誤りとする真の男女共同参画社会実現を求める決議」採択
03年10月 東京都荒川区長(後、汚職で逮捕、辞職)が「形式的、機械的平等論の行く末は、家庭の崩壊、性道徳の乱れ、教育の無力化、伝統文化の否定につながり、ひいては日本社会の崩壊を招きかねない危険な考えを内包している」と発言。男女平等攻撃の論客を条例案策定の懇談会委員に任命
03年12月 三重県議会で土橋伸好教育長は「あいまいな定義であるジェンダーフリーという言葉は、今後県教育委員会では使わない」
04年 3月 三重県議会は「性教育、ジェンダーフリー教育の是正を求める請願」を不採択に。ただしジェンダーフリーの言葉は県教委で不使用に
04年 3月 長野県岡谷市は「互いの特性を認め合う」条例修正案を可決
04年 3月 青森県、公文書でジェンダーフリーという表現を使わないと決定
04年 3月 山口県は「教育再生地方議員百人と市民の会」の岡村精二議員に、ジェンダーフリーという言葉が誤解を招くとして「学校における男女平等教育推進の手引き」不使用を通達したと答弁
04年 3月 衆議院予算委員会で、西川京子自民党衆議院議員(日本会議の「日本女性の会」副会長)は「男女の機会平等をめざす男女共同参画社会基本法の理念と違う、行き過ぎた教育がジェンダーフリーの名の下に行われている。国の秩序を乱し社会問題となっている」と発言。さらに「性差否定の教育が急激に広まっている。中性人間を創るような教育現場に危惧を感じる」
04年 3月 衆議院でジェンダーフリーの質問に、福田官房長官は「言葉の使用は自治体の判断」と答弁
04年 4月 内閣府はジェンダーフリーの用語にについて「使用しないほうが良い」の考えを示す
04年 4月 石原東京都知事は「男女は本来等質でない。質が違うということは大事なことであり、それを差別とか不平等と勘違いしてはいけない。ジェンダーフリーの考えは非人間的だと思う」。米長邦雄東京都教育委員は「一番大きな問題は男女混合名簿です。これについては校長が毅然とした態度ではねつけることが大切です」
04年 5月 東京都教育委員会で一委員は「男女混合名簿が性差をつぶすことに刷りかえられるのは危険。男女平等を短絡的にとらえているようにも取れる」
04年 6月 福岡県筑後市議会で「男女の区別を差別と見誤って否定の対象としないように」の条例修正案を可決
04年 7月 東京都荒川区長が区議会で男女共同参画社会基本条例案を取り下げる
04年 8月 東京都教育委員会はジェンダーフリーの言葉不使用を決め都立学校に通知。
「男らしさ女らしさをすべて否定する意味で使われることがあり誤解を招きかねないため」「男らしさ女らしさをすべて否定するような誤った考え方としてのジェンダーフリーに基づく混合名簿を作ってはならない。男女平等理念に基づくものは従来どおり使える」
04年 9月 神奈川県教育委員会は「ジェンダーフリーという言葉を改定中の男女平等教育の指導資料で使わない」方針。曽根教育長は「男女の違いを画一的に一切排除するという意味での使用の場合があり、誤解を招く恐れがある」と説明
04年12月 埼玉県は「新しい歴史教科書をつくる会」副会長高橋史朗氏を教育委員に任命
04年12月 「新しい歴史教科書をつくる会」が全国一ひどいジェンダーフリー条例と標的にしていた三重県桑名市の「男女平等をすすめるための条例」が失効。02年施行の条例に03年反対の画策、『正論』03年4月号で条例の過激さを批判。条例を危険視する会を作った。04年9月議会で「条例失効を求める決議」を採択。合併による新市に引き継がないことを決定
05年 1月 「新しい歴史教科書をつくる会」の八木秀次会長は「ジェンダーフリー、教科書、領土はすべて地下茎でつながっている、敵は一緒と確認しておきたい」
05年 3月 参議院予算委員会で山谷えり子議員は「男女ごちゃ混ぜの教育をしたり、激しい性教育をしたり結婚の否定とか。ジェンダーフリーというどこの言葉でもない英語のようですが、全然英語ではない、勝手に日本がつくった定義もわからない言葉を使って独り歩きさせたり混乱が起きている」
05年 3月 男女共同参画相の細田官房長官は「ジェンダーフリーという言葉を政府は使っていないし、社会的に定義を示すことはできない。できるだけ使わないことが望ましい」
05年 3月 千葉県教育委員会は「ジェンダーフリーという言葉を公文書や会議で使わない方針」を県立学校などに通知。「さまざまな受け止め方があり誤解や混乱が生じる恐れがあるため」「男女平等教育の推進に変わりはない」
05年 5月 自民党内に「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」発足。安部晋三党幹事長代理が座長、山谷えり子参議院議員が事務局長。
安倍晋三自民党幹事長代理は「ジェンダーフリーを進めている人たちは、国家家族の価値を認めないのが特徴。社会、文化の破壊にもつながっている」
05年 6月 中山成彬文科相は「教育の世界においてジェンダーフリー教育だとか過激な性教育とかがはびこっている。日本をダメにしたいかのようなグループがある」
05年12月 逢沢一郎自民党幹事長代理を座長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」は、安倍晋三官房長官に男女共同参画基本計画改定における「ジェンダー」という文言を削除するよう申し入れ
05年12月 香川県議会は「『ジェンダー』、『社会的、文化的に形成された性別』といった用語を使用しないこと」などとする決議を可決
05年12月 千葉県議会は自民党提案「真の男女共同参画社会は、個人の内面にかかわる男らしさ・女らしさ、あるいは伝統や文化などを十分に踏まえた上で」、「『ジェンダーフリー教育の推進』通知が全国の自治体中唯一発せられるなど、偏向思想は目に余る」などとする意見書を可決

(新聞報道などをもとに作成し、『おんなの叛逆』53号[ 2005年12月刊]に掲載された三井筆「バックラッシュ年表」に、加筆したもの)


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