男女平等主流化で実現した福祉国家とは

氏田 壽

男の健康度も高いノルウェー

 女性政策研究家で都議経験者の三井マリ子さんが、11月5日「ヨーロッパに学ぶ男女平等」と題して講演し、男女共同参画社会をめざす市民が熱心に聴いた。

 三井さんは話の始めに、この会のため市民向けに会場前に立てた看板のタイトルに、男女の文字が横並びに書かれていたことを評価し、「こういう感覚がバランスのとれた社会です」と話され、人の使う時間の男女による差の不合理性や賃金格差、物事を決めるときの男女の割合などについて、世界の国から遅れている日本社会の現状を話された。
さらにスライドを交えて北欧・特にノルウェーの実情を詳細に報告された。

大臣も警察署長も女

 世界一男女平等が進んでいる国ノルウェー。女性の大臣や市長、党首も当たり前で、スライドに映し出された警察署長はスリムな女性、赤ちゃんを抱いた若い女性はオスロー大学法学部で弁護士を目指す三児のママ、大学にも保育園があり、学生ママにはマンションまで与えられると聞いてびっくり。

 教育費も医療費も日本に比べたら問題にならない安さ、安心できる老後、男女のあり方も結婚、同棲、シングルとどんな生き方も認められている自由な社会だ。

 しかし日本と同じように1960年代までは小さな子の母の十人中九人が家にいて、子どもや老人、病人の世話をするのはもっぱら女性だったという。

 そんな国を変えたのは、1978年に成立した男女平等法。クォータ(割当)制と男女平等オンブッド(男女平等を監視、指導する国家機関)は働く場での性差別を解消し、国会議員をはじめあらゆる分野に占める女性の比率を40%超に押し上げた。夫婦共働き家庭が普通で、出生率は現在1・8人少子社会も克服している。

市議会議員は無報酬

 選挙はすべて比例選挙であることが、多数決による民主主義を支えているのだろう。政党の名簿は男女交互に並んでいるので、当選者は一方の性に偏らない。市議会議員は市長以外無報酬、みんな様々な職業を持っているので、議会は夜開かれるという。

 議員はボランティアなのだ。スライドで見る議員たちは普段着のスタイルで、権威など全く感じさせない。男も家事や育児をやるのは当たり前だから、女だってこんな国なら誰だって議員になれると思ってしまう。

 ノルウェーの男性の健康度が世界的にも高いと聞いてうなずけた。それに比べ「男は一家の柱、愛する家族を養い守るのが男の使命」(これこそジェンダーだが)と言われ、長時間労働、リストラで過労死や自殺に追い込まれる男性の多い日本が悲しい。

 男女平等政策を主流に据えたからこそ実現した質の高い福祉と人権政策。女性のあらゆる政策決定の場への進出が社会を変えていく上でどれほど重要か思い知らされた。

 「何もしなければ何も変わらない」

 「どんな女性も社会を変える力がある」

 三井マリ子さんの熱いメッセージが私たちを励ます(泰)

出典 東久留米市民新聞84号掲載(2005.11.)




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