いーぶん 得ダネ!レポート

バックラッシュ裁判報告会に参加して

宇野 H さん


 日本各地に男女共同参画に対し、バックラッシュの風が吹いています。バックラッシュの標的にされた豊中市立とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」の元館長、三井マリ子さんは2004年3月31日に雇い止めにした豊中市を相手に裁判を起こしました。三井さんの報告会が7月3日大津で行われ参加してきました。

 2000年11月全国公募で初代館長に選ばれ、三井さんも、市民も選任方法に誇りを持っていました。就任後は、国内外の先進的活動を紹介するなど、数々の企画をし、メディアでも度々とり上げられました。日本女性会議大津では、パネラーとして参加され記憶に残る人がおられると思います。多くの豊中市民から強い支持を得ていましたが、2002年秋頃からバックラッシュ勢力により三井さんを排斥の方向への動きが始まったのです。

 三井さんを誹謗中傷するビラを市役所前でまいたりして「すてっぷ」の受付ですごんだりしましたが、この攻撃から豊中市は三井さんを守らず、対峙するどころか組織変更をすることで館長を置かない方針に変えて、事態を沈めようとしました。

 しかしその裏では、後任の館長の選任を密かに進めていたことも、後に明らかになり、不正な行政のやり方に三井さんは納得がいきませんでした。この成り行きは、毎日放送テレビで放映されました。その中で男性国会議員や、豊中市議会議員のコメントからは固定的な役割分担意識がしっかりと見えます。国会議員は、男は命がけで働く者だと発言されていましたが、この重さで熟年男性の自殺者の増加していることをどう思われているのでしょう。又、女性が家事と子育てをしなくなってきたことが、日本の社会の崩壊につながるような内容で一定の枠にとらわれた考え方で話されていました。個人の生き方が多様な社会の中で、人権をどう認識されているのかと感じました。市議会議員が、市民に働きかけて三井さんを追い出しに動いていることは訴状の内容を読んで分かりました。
 このような非民主的な攻撃に屈することなく立ち上がったのですが、全国から応援する人々が増え、原告弁護団は38人にもなり、この裁判は十年位になるだろうと言われています。裁判の費用はカンパや、住友電工男女差別裁判の解決金をもとに発足した「働く女性の平等への挑戦・裁判基金」が活用されることになりました。

 女性解放に命をかけてくれた先達がいます。日本女性の人権確立を盛りこんだ憲法草案に関わった、ベアテ・シロタ・ゴードンさんの存在があって戦後、女性参政権が確保されました。男女共同参画社会推進にむけて学習し、活動している私としては三井さんを応援し裁判を見続けていたいと思いました。

 男女共同参画は、どういうことなのか、またなぜ大切な国民の責務なのかを理解していない故に、非道な行為がとられるのではないでしょうか。女性だからとか男性だからと性差によって人束にせず、一人ひとりの人権を尊重することが大切です。非科学的なものさしで、人格を否定し、傷つけることは許しがたいことです。風習、しきたり等による男女の差別もありますが、女性も男性も互いに自立するための努力が必要です。男女平等は、女性と男性が同一化、均一化、同質化することでは無いと思います。このことを理解してお互いに認め合えるならバックラッシュは防げるように思います。男女の特性論を持ち出されることがありますが、個人の違いがあります。個人の持ち味を生かし、意思決定の場に参画できてこそ男女共同参画だと思っています。

 諸外国から認められるには、環境と人権問題にいかに対応できているかで、その国の資質が問われています。流動的な社会に柔軟的に対応できるように、自分の見慣れた空間に落ち着くだけでなく、ジェンダーに敏感であり変だなと気づいたら、学び理解し、意識を改めて生活することが、お互いに住みやすいまちづくりに参画していることであると思いました。(H.U)


出典:「いーぶん学舎通信」 Vol.4 2005年8月発行




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