館長雇止め・バックラッシュ裁判 

前代未聞の裁判「中止」
大法廷の傍聴要求かなわず

勝又みずえ(山口県)

 4月17日、豊中市女性センター館長を雇止めされたことを不当だとして、大阪地裁に損害賠償請求をしている三井マリ子さんの裁判があった。私は山口県本郷町から、朝7時に起きて大阪に向かった。証人尋問初日のこの日は、原告側・被告側・一般傍聴者計100名以上。傍聴席は45人分。前半・後半で交代するという事で、部屋の中に入るものは入り、私は廊下のソファーに陣取った。開廷を待つばかりとなった午後1時半、法廷の扉付近でなにやらざわついている気配がする。見ると入廷できなかった女性たちが、思い思いに大法廷での開催を要求しているのであった。

 実は、三井さんの裁判はいつもほぼ満員で、廊下で待機組みも多かった。2ヶ月前には、17日の傍聴希望者209名の署名を持参し、大法廷にして欲しいという要請を裁判所にしていたのである。つまり「傍聴をしたい」と言う強い思いは何ヶ月も前からはじまっていた。

 法廷扉付近での混乱はいつまでもおさまらず、係員もなぜか法廷の扉を閉めることが出来ず、法廷室内と外がお互いに丸見え。室外での体をはっての頑張りが、傍聴席の人にも波及したのか、裁判長の「一旦全員退席」の指示を無視して動ぜず。「大法廷に移れば済むことです」と、口々に訴える。ついに裁判長の血圧が上がったのか「中止します」と、あっというまに自ら退廷。これは多くの傍聴者が発したエネルギーが、裁判長の紛争解決能力を萎縮させ、裁判長席にいたたまれなくさせたせいではないだろうか。

 こうして4月17日の裁判は不成立となった。この前代未聞の事態に、三井側弁護団はただちに司法記者室で記者会見。当日夕MBSテレビで放映された。80人の大法廷で開催すれば、希望者ほぼ全員傍聴でき、記者席が14もあり、記者による傍聴と取材・新聞記事掲載への可能性が大になるという。

 大法廷が空いていて、しかも2ヶ月前から傍聴希望者を届けていたにも関わらず、何が何でも小法廷にした裁判長の態度は、市民の傍聴する権利を侵害しただけでなく、「開かれた司法」をめざす今日の流れに逆行するものであると思う。


(出典:女性ニューズ 2006年5月10日(水))


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