陳述書

2007年12月8日          
石原 敏(元豊中市職員)

 元豊中市職員として、また、学校における日の丸・君が代の強制に反対をしてきた者として、三井マリ子さんの雇止めの背後にある「右翼」勢力の動きに関心を持ちながら本訴訟を傍聴してきました。その立場から陳述します。

 ジェンダーバッシングにのっかった、原告排除については、判決文43Pから46Pに列記されているだけでも、いかにひどいものであったかがわかるというものです。

 被告豊中市は、日の丸・君が代をめぐる「右翼」の攻撃について、教育委員会を通して、また豊中市役所周辺を音量を大きくしてゆっくりと流す街宣車活動を通して、よく知っているはずです。私自身も、1997年末から1998年ごろにかけて、何回か豊中市役所周辺での街宣車活動を直接見聞きしています。

 特に1997年12月から2月を はじめとする日本皇政社による申し入れの連続で、豊中市教育長自らが日本皇政社代表の細田政一(日本民族行動会議議長)らと面会しています。そのことからも、豊中市は「右翼」のメンバーやその動きを十二分に知っていたのです。

 さらにいえば、現市長(浅利敬一郎)は教育長時代に、卒業式の日の丸・君が代をめぐって、当該校の校長やPTA会長など学校関係者さえ望まなかった、教師を「卒業式を妨害した」として豊中警察に個人的判断で刑事告発した人物です(後、その教師は不起訴。添付書類1、2*1)。その背後には、北川悟司議員(当時。以下同じ)などによる、議会での日の丸・君が代に異議を持つ教職員への強い対処を求める発言があったのです。北川議員は、1999年ごろから教科書採択問題や、学校における「国旗掲揚国歌斉唱」の徹底を議会で発言し、産経新聞がそれを何度も報道していました(添付書類3*2

 北川悟司議員が属する日本会議と根を同じくする「右翼」のターゲットは、教育委員会に日の丸・君が代強制を求める行動から、2000年代には、ジェンダーバッシングに移っていたのです。それに応えた北川議員をはじめとする日本会議系議員達による攻勢が、豊中市議会ではじまりました。北川議員は、自分の属する常任委員会を文教から総務に移し、ジェンダーバッシング発言を続けたのです。

 2002年3月、豊中市女性問題審議会の答申が出て、豊中市は、男女共同参画推進条例制定へと動き出しました。そこで、02年7月の市議会本会議で北川議員が、これらの男女平等推進の動きにストップをかけるべく、山口県宇部市の例を出したのです。

 そして、すてっぷに対しては、窓口での嫌がらせ、名を名乗らない人びとによる電話による嫌がらせが続きます。嫌がらせしていた「教育オンブッド豊中」のホームページには、これらの行動が日誌風に記されています(添付書類4,5*3 )。教育オンブッド豊中のホーページ作成者は増木重夫氏で、「教育再生地方議員百人と市民の会」の事務局です。こうした嫌がらせについては、市から派遣された山本事務局長が「完全に右翼の活動でしょうね」と原告に語っているとおりです(甲158)。

 判決文43P〜48Pで認めているバッシング活動はごく一部なのです。

 2003年2月8日、すてっぷで、国連人口基金東京事務所長池上清子さんを迎えて国際セミナーがおこなわれています。主催は、(財)とよなか国際交流協会、(財)とよなか男女共同参画推進財団、世界人権宣言豊中連絡会議の3者、タイトルは「たのしもう・ふかめよう『多民族・多文化共生社会』」です。

 セミナーで配布された資料には、すてっぷについて、「性別による差別をなくし『女(男)だからこうあるべき』という考えに生き方をしばられずに女性も男性も自分らしく生き生きと暮らせる社会の実現をめざして〜」とあります。 同時に配布された年表には、2000年、すてっぷ開館、2002年女性問題審議会答申、2003年男女共同参画推進条例制定予定と明記されています。

 このセミナーは、翌月の3月市議会で男女共同参画推進条例を制定することを確実なこととして開催されていたことは出席した人たちの印象からも明らかです。

 しかしながら、判決文50Pには、「しかし、被告豊中市としては、そのころから条例上程に対し、さまざまな意見や要望が出されていることや、男女共同参画に関する考え方、必要性について、十分な議会説明が出来ていないと感じていた」とあります。そして、「しかも4月には選挙が〜」と続きます。

 空々しい言い分です。答申から1年、北川議員の質問から8か月がたっています。準備ができていなかった、とは到底考えられません。市議会議員選挙も統一地方選挙であり、みなわかりきっている日程です。真実は、突然、条例上程が政治的圧力によって阻止されたのです。

 それが真実であることは、甲15にある日本会議のホームページへの2003年2月29日付け投稿が示しています。以下です。

 「豊中市の北川悟司議員からの情報によると、豊中市男女共同参画条例案は3月議会では上程が見送りになったということです」

 「心あるしっかりした議員の力と首長の決断があれば、まがい物の条例の正体は見破られ、阻止することができる証明」

以上

添付書類   1 毎日新聞記事
 同          2  朝日新聞記事
 同          3  産経新聞記事
 同          4  教育オンブッド豊中活動記録
 同          5  相関図

      注
      *1 「事前に市教委が告訴要請」(毎日新聞2001.7.14)、「教諭告発、個人の立場」(朝日新聞2001.7.20)
      *2 「文教都市の虚像 豊中の教育 1−6」(産経新聞2000.11.3〜11.11)
      *3 「教育オンブッド豊中活動記録」、「相関図」。ホームページ参照

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