陳述書

2007年12月3日                            
岡田啓子(元大津市職員・前大津市議)

 一審判決は、原告三井マリ子さんの正当性を認めながら、また被告側の不当性を確認しつつも、「法に違反しているとはいえない」という自己矛盾をはらんだものでした。公平・公正な判決を求め続けてきたのに、行政=権力者の肩を持ったといわざるを得ない不当判決に、私は納得が行きません。

 私は30数年間自治体の職員として、またこの4月までの一期4年間は市議会議員として長く且つ深く行政に関わってきましたので、その経験を踏まえて2点について陳述いたします。

1.非正規雇用労働者無くしては役所の仕事は回らない現実。現状を容認してしまう判決で一番喜ぶのは誰!? ← 均等待遇・格差是正の判決を

 全国の自治体(行政)がこの裁判結果に注目しています。その理由は、共に脛に同じ傷を持つ身であるからであり、同じ穴のムジナとして次はわが身に及ぶことであると警戒しているからです。つまり、嘱託職員、臨時職員、派遣職員など非正規雇用労働者抜きでの自治体現場の仕事は成り立たない実態があるからです。

 大津市でも例外ではなく、正規職員よりもはるかに知識も経験も多い方々が何十年と嘱託職員として働いている現実があります。福祉、病院、教育などの最前線で働く非常勤・非正規雇用、そのほとんどが女性です。一年契約なので4月1日は強制的に休んでもらって区切りをつけています。異議申し立てをしようものなら、雇止めになるのですから、彼女たちは心ならずも従っています。そうしないと法に触れるのですから…。でも、おかしな話です。

 数年前に原告三井マリ子さんと一緒に訪れた北欧諸国では、女性が尊重され、福祉が充実しておりました。非常勤・非正規雇用というようなセコイ労働ではなく、何よりも女性が安心して働くことができる条件が整っていました。日本との雲泥の差に大きなため息が出てしまいました。

 悪条件低賃金の非正規雇用労働者をなくすための判決を期待するものです。日本の行政の常套手段であるこのような雇用形態を根絶し、正規と非正規の格差を無くし、誰もが安心して市民のために働けるような判決を出していただくようお願いします。

2.地方自治行政の通常のあり方からは到底考えられない組織体制の変更 ←すぐに「指定管理者制度」に移行するのに、敢えてこんなことをしますか!?

 私は大津市議会で「指定管理者制度の導入」についての質問・提案を続けてきましたので、判決文が原告の主張(「最終準備書面」p24〜37)に全く理解を示していないことを不思議に思います。

 2003(平成15)年6月、指定管理者制度の導入を定める改正地方自治法が公布され、同年9月施行されています。これにより全ての「公の施設」は自治体の直営か公募による指定管理者による管理運営が行われることになりました。全国の全ての地方自治体が対象の大改革であり、豊中のすてっぷも例外ではありません。

 つまり、このような体制変更の前ですから、被告市は、よほどのことがない限り組織のトップである館長を柔軟に対処しやすい非常勤のままにしておくはずです。現に、被告市は書面で「非常勤館長は『雇用関係が解消しやすい』」などと言っています。それなのに、被告市は、2003年秋、数人の市幹部で館長を非常勤から常勤に変えることを決め、2004年2月、臨時に理事会を開いて了承をとりつけ、4月から強行しました。そこには、よほどのことがあったと推測します。

 行政職員は法に基づいた仕事をしなければなりません。本郷氏は「指定管理者制度の導入が全く予測できなかった」などとしていますが、私が関わっている大津市の場合はもちろんのこと、指定管理者制度の導入が予測できるのは当然のことであり、地方自治体の幹部職員として認識不足も甚だしく、資質を疑いたくなります。また、被告らは、「(すてっぷの)組織体制変更の実施が2004(平成16)年度必要不可欠」と繰り返してきましたが、時期から言っても指定管理者制度の導入を定める改正地方自治法抜きに、すてっぷの体制変更は到底考えられません。

 「指定管理者制度の導入」が、図らずも被告市の欺瞞を暴くことになり、そのいい加減さ・迷走ぶりをもあぶりだしていることを私は強く指摘しておきたいと思います。

 近い将来、指定管理者制度が導入される「男女共同参画センター」「女性センター」の将来が気になります。また、各自治体の女性政策・男女共同参画施策の変質・低迷・後退・縮小・統合も危惧しています。

 自治体の暴走・迷走に歯止めをかけるためにも、館長雇止め・バックラッシュ裁判で、女性が未来に希望を持て、元気になれる判決を出してくださるようお願いいたします。

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