陳述書

2007年11月1日
佐藤 周一

すてっぷを訪問して

 私は、地方機関に勤めている広島県職員です。休日には、各地での男女共同参画や平和関連行事にボランティア参加をしております。

 豊中市の「すてっぷ」は大変立派な施設であり、また、組織体制の強化案を実行に移され働く職員に変更があった、と聞き、2006年12月1日の夕方、「すてっぷ」へ参り、3日間、館内を見学させていただきました。そのときの様子を報告いたします。

 5階のロビーには10人程度の人がいましたが、ことごとく、受験生とその親と思われる人たちでした(写真1)。

 5階のライブラリーも、受験生がほとんどで、私が観察した際に、男女共同参画関係の本を読んでおられたのは一人だけで、館内でおこなわれていた「女たちの映像祭」参加者のようでした。

 夕方5時を過ぎると、5階のすてっぷ全館の受付には一般職員ではなく、制服姿の男性の警備員が座っておられました(写真2)。対外的な窓口である受付に警備員が座っておられたのでは、地域の市民の方々も近寄りがたいのではないかと懸念されました。

6階にある広々としたミーティングルームも受験生だらけでした(写真3)。そこには、以前そこにあった印刷にともなう機器類が、6月から5階に移転されたという張り紙がありました(写真4)。

 私は、6階のミーティングルームに印刷機や紙折り機などがあれば、市民活動をする際、話し合いながら編集・印刷作業したりすることにとても便利であり、市民の活動を活性化させるだろう、と思いました。5階のその印刷機器類が移動されたという場所を見に行ったところ、三角形の非常に狭いコーナーで、印刷するだけで精一杯のスペースで、話し合いをするスペースなどまったくありませんでした。

 私は、初めて「すてっぷ」を拝見して、女性の人権の確立と男女平等の推進を目的とする男女共同参画推進センターとしてみた場合、運営面で改善の余地が大いにあると感じました。2004年度から事務局の職員体制を強化されたといいますが、これでほんとうに強化されたのだろうか、とたいへん疑問に思いました。

 以下1〜4は2006年12月1日当時撮影した写真です。

受験生だらけのロビー受付に座る男性警備員(右端)

写真1: 受験生だらけのロビー写真2: 受付に座る男性警備員(右端)

受験生だらけのロビー 受付に座る男性警備員(右端)

写真3: 6階のミーティングルーム写真4: 印刷機移転を知らせる写真

 1回の見学だけで、すてっぷの組織強化になっていないことの証明はできないと思い、約1年後の2007年10月13日(土)、私は、すてっぷを再び訪れました。

 5階ロビー、6階ミーティングルームを再び訪問してみました。20人を超える人がいましたが、漏れ聞こえる会話から高校生ないし受験生およびその家庭教師と思われる大人たちであることがわかりました。

 6階ミーティングルームは、1年前と異なった次のような張り紙がありました。
「2006年6月1日から受付で必ず受付をしてからお使いください。グループのミーティングの部屋ですが、一部自習にも開放しております」(写真5)。

 そこで私は、5階の受付に行ったところ、受付には受付用紙と番号札がおいてありました(写真6)。使用希望者は受付用紙に記入の上、番号札を取り、席に番号札を置くようになっていました。

 席は、自習用の長机6つにそれぞれ椅子が2個ずつ、合計12席あり、席番号がAからLまでありました。また、ミーティング優先テーブルが1−3まであり、椅子がそれぞれのテーブルに5個。ミーティング専用テーブルが5番と4番のテーブルで、それぞれ椅子が5個。(写真7)

 自習用長机は全部受験生が使用しており、ミーティング優先テーブルも受験生が全て占拠していました。そして、5番のミーティング専用テーブルのみ、女性二人組が作業をしていました。4番のミーティング専用テーブルは、誰も使用していませんでした。(写真8)

 私は、自習をしようと、受付用紙に名前を書き、「自習」に丸をし、Cの番号札を取りました。そしてミーティングリームに戻ったところ、すでに受験生が占領していました。しかたなく、私は受付に再び戻り、男性職員に声をかけました。

私「テーブルが先にだれか使っているのですけど」
職員「あ、そうですか」
私「ミーティング専用テーブルだけあいていますが、使っていいですか」
職員「駄目です。ミーティング専用テーブルはミーティングだけです」

 なぜ、このような実にくだらない、官僚的な手続きを新たに設けたのでしょうか。男女平等を進める市民たちがミーティングに使用することがあった場合、すべて受験生に占領されていては、目的施設としての体面がないからという苦肉の策としか考えられません。

 しかし、現実には、受付簿に書かれた使用者25人中24人までが、「自習」に丸をしていました。「ミーティング」に丸をしたのはわずかに1人でした(写真9)。その日の使用者の96%が「自習」に使っているのです。しかも、自習用テーブルが一杯なので、私のように断りもせず、受験生らがミーティング優先テーブルを無断で使っている有様です。看板(写真5)には「一部自習にも開放しています」と書かれていますが、看板に偽りありとはこのことです。

 なお、印刷機・紙折り機のスペースは2006年12月1日当時と同様、5階の三角形の狭いスペースにありました(写真10)。

 この実態を直視した私は、すてっぷが男女共同参画のための施設とは思えませんでした。

 男女共同参画推進条例施行後、その推進拠点としてすてっぷを強化しなくてはならないからと、2004年4月から組織変更をしたというのが被告側の主張でした。一審判決は、組織体制の変更が利用の低迷につながっていることを否定しています。しかし、桂さん本人が証言で、仕組みとして男女共同参画の仕事をあまりできなかったことを認めています。実際、利用者として見ても、仕組みとして男女共同参画推進を低迷させていると感じました。

  私がよく市民活動で利用する広島市の「市民交流プラザ」のミーティングルームに相当するスペースは、そのようなことはありません。広島市の場合は、自習の学生も一定割合はいますが、街づくりや平和、男女共同参画などの市民活動の関係者の使用が多いのです。人々、とくに女性たちも活発に議論している様子が、伺えます。

 もし、男女平等推進などの市民活動が全国的に低迷しているのであれば、組織体制の変更が必ずしも影響を与えたとは言いがたいかもしれませんが、広島市の施設を見る限りそうではないのです。豊中市は、この惨状を一体全体どう思っておられるのでしょうか?

 以下は、2007年10月13日撮影の写真です。

受験生だらけのロビー受付に座る男性警備員(右端)受付に座る男性警備員(右端)

写真5:「一部自習にも開放」の張り紙写真6:ミーティングルーム使用受付台 写真7:ミーティングルーム入口に掲示された座席図

受験生だらけのロビー受付に座る男性警備員(右端)受付に座る男性警備員(右端)

写真8:ミーティングルームの様子写真9:25人中24人が右側(自習) 写真10:狭い三角形の5階の
に丸をしていた受付簿印刷機・紙折り機スペース

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