高橋芳恵
この割り当てられた紙面に、よもやこのような表題の文を書くことになろうとは・・・。ノー天気？な私は勝訴を疑わなかった。もし、万が一にも敗訴なら、裁判官は事実認定が出来ていないか、準備書面を読んでいないか、審議中も居眠りしていたか、などと思っていた。しかしそのどれも外れていて、しかも敗訴だった。 9月12日、大阪地方裁判所での判決は「おかしいことはここにもある、そこにもある」と認めながら、でも、「原告に慰謝料を支払わなければならないほどの違法性はない」という主旨。
まざまざと、過去の記憶がよみがえる。他人の足を踏んでその足の痛みがわからない奴。踏まれたほうは「痛い！」と悲鳴をあげる。踏んだほうは「そんなに痛いわけが無いでしょう」と踏み続ける。今回の裁判官は過去の判例から、少しは、踏まれたものの痛みがわかる方かと思っていた。それだけに、やりきれない思いだ。
裁判を傍聴し、その後の「弁護士解説付き交流会」に参加された方のお話によると、
１、 三井さんの業績・貢献などから更新が期待されることは認める、としながら雇止めは違法ではないとしました。全国公募なので「すぐに辞めさせると予定していたとは考えられない」とも言っています。また、企画・立案の仕事をしており、「一定程度の更新を想定していた」ことも認めています。
2、 組織強化のために非常勤から常勤化したという市の主張に、原告側は組織強化になっていないと立証してきました。そして、2代目館長・桂さんも「組織体制の強化になっていない」との証言したのですが、「桂が『男女共同参画の仕事ができていないと感じている』ことは認められる」とだけ言っています。それが、「予算も職員もつかない」という「仕組み」のためであることを述べた桂証言を無視しています。
3、 また、組織変更案を公開していなかったことや三井さんに後任の人事を秘密にしていたことについては、「原告に秘匿しなければならない必要があったとは考えられない」と、市のおかしさを指摘しています。しかし、判決は、三井さんに相談しなかった理由として、「退任する原告に細かな組織変更を相談してもしかたがない」などと言っています。この部分は、被告側も主張していないことを裁判長が勝手に認定しています。
４、 後任捜しについては、「原告に対して意図的に情報を秘匿していたことは明らか」と明快に指摘しています。しかし、「その真意は不明と言わざるをえない」（！）などと言って、「違法と言うことはできない」と述べています。
判決は、こんなふうに、事実を認定しておきながら、その理由を「不明」と言ったり、 変な理屈を言っている箇所が目立つそうです。
ところで、これまで豊中市民の声があまり届かなかったが、判決後に市民からの声をきいた。 これが、札幌市で「第2女性センターを作るにあたって、市民の声を聞きたい」と、行政に振り回された私たちと状況が非常に似ている。市民の声は聞くだけ聞いて、いっさい反映されなかった。
・・・・２００２年の１２月。「バックラッシュ」の動きに危機感を抱いた山本瑞枝事務局長から「男女共同参画条例が危ない。市民の協力が必要です」と呼びかけがあって、私たち市民は、「すてっぷ」（男女共同参画推進施設）に集った。山本事務局長は、「すてっぷ」や三井さんに対する「バックラッシュ勢力」のさまざまな攻撃を一覧表にして配布した。その場で「男女共同参画条例をつくるとよなか連絡会」ができた。私たちは男女共同参画推進条例の制定を目指して、世論喚起の市民運動を開始した。 しかし、この市民の運動に対して、豊中市や山本事務局長の態度は日が経つにつれて変わっていった。「連絡会」結成から1年半後の２００３年夏ごろには、「あなたたちの動きは過激と映っている」とまで言い出し、活動をけん制してきた。その豊中市の変容の背後に「バックラッシュ」からの圧力があったことは、運動にかかわった者なら誰でも容易に分かることだった。・・・
58億円もかけて2000年に豊中駅前に造った「すてっぷ」。3年で館長は「使い捨て」、後継で迎えた桂容子館長も、権限も財源も乏しい状況に置かれて苦労が絶えず、体調を崩して今年3月で退職・・・館長不在の状態が続いて「すてっぷ」は迷走状態。裁判には勝っても、豊中市の人権政策は地に落ちたままだ。
9月26日、三井さんは控訴しました。
多くの事実は認定されています。「４，５発殴られたことは認めるが、そのくらいは 我慢しろ」は 許せません。
（出典：『あごら札幌』No.273 2007年10月15日）
