『ワーキングウーマン』2008.03.09 第130号

報告 2月26日

館長雇止め・バックラッシュ裁判 控訴審第1回冒頭陳述開かれる!


『ワーキング・ウーマン』

 
吉川と岡田が傍聴と「弁護士解説付き交流会」に参加してきました。大法廷使用にまでは至りませんでしたが、前回同様傍聴券が発行され、抽選が行われました。今回は急きょ、控訴人、三井マリ子さんの陳述が認められ、10分ほどの陳述を三井さんが行いました。そこには、三井さんの怒りと苦しみが凝縮されて詰まっていて、傍聴席を埋める人々の涙を誘う場面もあり陳述が終わると誰からともなく拍手が沸き起こったとのこと。(岡田は交流会のみ参加)


 「ファイトバックの会ホームページの意見陳述草稿」より、その一部をご紹介します。

 『豊中市や財団は、うそにうそを重ねて私の人生を翻弄しました。私はその人間としての不誠実さに直面して苦しみました。体中に湿疹ができ、眠れない夜が続きました。そして職を失い、収入がなくなりました。一審判決はその苦しみを癒すどころか倍増させるものでした。この私の苦しみは、日本社会において軽んじられてきたおびただしい数の働く女たちの苦しみであり、大勢の非常勤職の人たちの苦しみでもあります。』

 『女性の人権擁護と男女平等の推進を市民の先頭に立って担うべき豊中市が、女性の人権擁護と男女平等施策を誠実に実行してきた女性センター館長を、うそまみれの陰湿な手法で排除したのです。使い捨てたのです。そのことで、私は、精神的にも経済的にも、計り知れない打撃を受けました。だのになぜ、それが違法にならないのでしょうか?』

 『最後に申し上げます。週2,3日出勤の館長職では運営上問題があるなどと理由をこじつけて、市は非常勤館長の私を排除しました。しかし、私の後任の常勤館長は「組織強化になっていない」と法廷で証言し、2007年3月31日付けで辞職しました。こうしてすてっぷは、常勤館長の休職期間を入れると館長職不在のまま1年以上がすぎました。まさに、バックラッシュ勢力の狙い通りのことが、すてっぷで起きているのです。この一事をもってしても、豊中市のいう組織強化なるものは、私を排除するための単なる方便だったといえると思います。控訴審の公正なる審判を切に願い、意見陳述を終えます。』

 交流集会には、多数の支援者と寺沢、川西、宮地、島尾(敬称略)の4名の女性弁護士が参加され、それぞれが分担された「控訴理由書」の一審判決への批判・反論を、解説していただきました。館長常勤化を含む組織変更を急ぐ必要がなかったこと、バックラッシュ勢力を過小評価しており、実際の攻撃の激しさや、各自治体がどれほど強くその影響を受けているかという実態を裁判所が看過していると指摘しています。控訴理由書では、それらを具体的に一つ一つの実例を積み重ねて丹念に説明しています。

 宮地弁護士は、館長職を有期雇用にしていたことを合理的に説明しようとすれば、有期雇用の期間を、試用期間と同様のものとして理解するしかない。試用期間である場合に、最高裁判例では神戸弘陵学園事件最高裁判決(一年の期限付き常勤講師として雇われた職員が、その期限満了をもって辞めさせられた事件)に見るように、決して使用者には、広範な裁量権が許されていない。したがって、財団が、館長としての適正に問題がない三井さんの常勤館長への採用を拒否しうる「客観的、合理的な理由」を明らかにしない限り、控訴人は採用を期待しうる地位にあり、財団は控訴人と他の応募者を同列に扱うことは許されず、控訴人を優先的に採用する義務を負う、と、力強い主張を展開しています。


 最後に質疑応答のなかで、印象に残った弁護士の言葉を紹介します。

宮地弁護士「あきらめる必要はない。裁判官の良心を呼び起こすような創意工夫ある働きかけ、支援の運動を広げていくことが必要」

川西弁護士「歴史的な裁判であるにもかかわらず、マスコミが報道しない。裁判官はマスコミ報道等に敏感であるからマスコミがとりあげるような運動展開を!」

島尾弁護士「皆さんからの多くの陳述書へのご協力、大変助かっています。裁判官は官舎と裁判所への往復だけの生活になりがちで、世間の常識に疎い面がある。皆さんの協力が裁判官の現状認識を深める可能性は大きいと思います」などなど。

 弁護士は間違いなく、目いっぱい勝つつもりで仕事している!と伝わってきて、とても励まされます。

 すてっぷ設立の背景となった男女共同参画社会基本法は、『男女平等社会を作ることは国の最重要課題』とうたっています。この法律の趣旨に自信と誇りをもってこの裁判を応援してください。大法廷に入りきらないほどの傍聴人が裁判所に足を運べば、裁判官もマスコミも、しっかりと目を見開いて、向き合わざるをえないはずです。男女平等は法律の世界では、すでに国の施策となり、優先課題でもあります。それがバックラッシュ勢力(男女平等への反対勢力)によって、各地で押し返されています。この勢力は決して数の上で多数ではありません。が、卑劣かつ暴力的な威嚇でもって主に地方自治体を舞台に目立った活動をしてきています。そろそろ、こちらも協力して押し返す時期かと。

 三井裁判の勝利は、バックラッシュへの反撃に大きく貢献するはずです。また、非常勤への恣意的な雇い止めにストップをかけることは、男女の同一価値労働・同一賃金にもつながる一石となることはまちがいありません。知ることは、応援の第一歩です。皆さん、館長雇い止め・バックラッシュ裁判(三井裁判)を知ってください。

     (岡田 記)

(出典:『ワ−キング・ウ−マン』〒464-0092 名古屋市千種区茶屋が坂2-6-B-805)

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