豊中市5月定例議会本会議 坂本やすこ個人質問と答弁

2010年5月24日

すてっぷ裁判についての質問をおこないました。

1問目 質問

 「報告第1号専決処分の報告について」質問いたします。

 豊中市と「とよなか男女共同参画推進財団」を相手に、雇止めに対する損害賠償を求めた「すてっぷ初代館長」三井マリ子さんの控訴審で、3月30日、大阪高等裁判所の塩月裁判長は、三井さんの訴えを大幅に認めた判決を下しました。

 しかし、豊中市と「すてっぷ」財団は、判決が出たその日に上告および上告受理申立ての専決処分を決め、4月1日付で手続きを行なったとのこと。メンツのためだけに上告することがないようにと、私を含め豊中市議会議員10名の連名で提出した「申入書」や、市民グループからの数々の要望書は無視されてしまいました。

 そもそもこの件は最初から無理があります。

 全国公募までして、三顧の礼で迎えた「すてっぷ初代館長」三井さんは、期待に応えて実に精力的に男女平等社会を目指して活動しました。しかし、その活動を快く思わない一部議員や団体が、激しい執拗な三井さんバッシングを繰り返し、男女共同参画推進条例の成立が危機に瀕していました。そのような状況の中で三井さんの雇い止めが起こったわけです。

 心ある職員や議員の皆さんも、当時の不自然な動きはよくご存知だと思います。三井さんの訴えに対し、今回の高裁判決は、具体的事実や関係者の証言などを総合的に判断し、三井さんを意図的に雇い止めしようと動いた豊中市と財団を厳しく指弾したものだと思います。

 市が勝訴した一審判決でも、地裁裁判長は、三井さんに対して、当時の財団事務局長が意図的に情報を秘匿していたこと、候補者に「あなたしかいない」と次期館長内定までした当時の人権文化部長が次期館長の選考委員会委員だったことは公正さに疑念を抱かせる、などと認めています。ただ、慰謝料を払わなければならないほどの違法性は認められないという判決でした。高裁判決は踏み込んで、豊中市の責任を厳しく指摘したわけです。

 開き直って最高裁に上告するのは、悪あがき以外のなにものでもありません。これ以上恥の上塗りはすべきではありません。

 そこで、質問します。

 この裁判が提訴されたのは2004年12月です。この事案についてこれまで訴訟費用はいくら支出してきたのでしょうか。お答えください。

 次に豊中市のどのメンバーで上告の専決処分を判断されたのか、おきかせください。

 浅利市長も、判決文をもちろん読まれたと思いますが、どのように感じられましたか。感想をおきかせください。

 次に上告を決めた理由についておきかせください。

 議案書の別紙には、豊中市が「上告及び上告受理申し立てを行う理由」として次のように書いています。

 「この第二審の本件主要事実の認定と判断については、特段の根拠を示すこともなく市や財団の事実関係に関する主張を認めないものであり、到底容認できない。

 また二審判決は「控訴人の人格を侮辱した」として、控訴人の名誉感情を侵害したことをもって、不法行為が成立すると判示するが、名誉感情の侵害は一般的には不法行為とはならないとされている。それにもかかわらず、不法行為となるべき特段の事情を示していない……。」

 事実認定は充分にされており、40ページ以上に上る判決文で十二分に根拠が示されているにもかかわらず、「特段の根拠がしめされていない」ということは、判決文を読んでいないとしかいえません。さらに判決は「三井さんを侮辱したことは人格権の侵害」と明快に断じているにもかかわらず、「名誉感情の侵害」にすりかえていることも私は理解できません。

 インターネット中継でも、豊中市民だけでなく全国の人たちがこの裁判の成り行きをみています。きいています。

 どのような理由をもって上告したのか、わかりやすく説明してください。

答弁

 

 

2問目 質問

 お答えいただきましたが、納得できません。

 豊中市は上告の理由に、判決文のなかの3点をあげ、特段の根拠を示していないのに、それを原因として共同不法行為を認めたことは、到底容認できないとしています。

 しかし、そうでしょうか。

 1点目の「三井マリ子さんを財団から排除するのと引換えに男女共同参画推進条例に賛成するとの密約があったとの疑いは完全に消し去ることはできない」について

 高裁判決では、

 「おそくとも平成14年3月ころから、被控訴人市や市議会の内外で、控訴人や被控訴人らに対する、控訴人の行動に反対の勢力による組織的な攻撃が行われており、その方法は、直接に反抗することができない被控訴人の職員に畏怖感を与えるような行動に出たり、嫌がらせを行ったり、虚偽に満ちた情報を流布して市民を不安に陥れたりするなど、陰湿かつ執拗であった」

 と根拠を示し事実認定して、豊中市がそれらの反対勢力を宥める(なだめる)必要に迫られていたことは推測されると背景を分析したうえで、豊中市が一部勢力に屈したことを断じて、特段の根拠を示しているのです。

 2点目の「館長である三井マリ子さんは、市や財団の関係者から館長職の在り方や候補者について、その都度説明を受けてしかるべき立場にあったにもかかわらず、これをないがしろにされた」

 については、判決では

 「職域内のローテーションで配置された職員や従業員とは異なり、特定の職に就くものとして応募採用され、就任後は、専門的知見や経験、知名度そして内外の人脈を生かして幅広く質の高い初代の館長職をこなしてきた控訴人として、「すてっぷ」の組織のあり方、自己を含む次期館長候補者について情報を得て、協議に積極的に加わり自らの意見を伝えることは、現館長職にある立場にあってみれば当然にあるべき職務内容として与えられるべきであるか取るべき態様ないし行動であって、これをないがしろにし、さらには控訴人の意向を曲解して行動する被控訴人ら担当者の動きがあった場合には、控訴人の人格権を侵害するものといわなければならない」と

 特段の根拠を示しているのです。

 3点目の「当時の財団事務局長と当時の人権文化部長とが、事務職にある立場あるいは中立的であるべき公務員の立場を超え、三井さんを次期館長職には就かせないとの明確な意図を持って動いた」についても判決では、

 「控訴人に説明のないままに常勤館長職体制への移行に向けて動き、控訴人の考えとは異なる事実を新館長候補者に伝えて候補者となることを承諾させたのであるが、これらの動きは、控訴人を次期館長職には就かせないとの明確な意図をもってのものであったとしか評価せざるを得ないことにも鑑みると、これらの動きにおける者たちの行為は、現館長の地位にある控訴人の人格を侮辱したものというべきであって、控訴人の人格的利益を侵害するものとして、不法行為を構成するものというべきである」と特段の事情を示しているのです。

 豊中市は、判決は「特段の根拠を示していない」「特段の事情を示していない」と上告の理由にしていますが、以上の根拠や事情をどうお考えでしょうか。おこたえください。

 人格権侵害については、「訴訟上のことで、裁判の中で明らかにしていきたい」とのお答えでした。しかし、この裁判は人格権の侵害であると論じて「意見書」を提出した早稲田大学浅倉むつ子教授は、「セクシャル・ハラスメントをめぐる判例」「職場におけるいじめ、仲間はずし、屈辱的取り扱いなどをめぐる判例」など数多くの裁判の事例を出しています。

 さらに「昭和町雇止め事件」にあるように、人格権に関する最高裁判決がすでに出ています。

 豊中市が、「名誉感情の侵害は一般的には不法行為とはならない」というのは、人格権侵害を名誉感情侵害にすり替えているだけでなく、筋違いであり、成り立たないと考えます。いかがでしょうか。

 おこたえください。

 以上、豊中市の見解を再度、おきかせください。

答弁

 

 

3問目

 いくら質問しても「係争中であるから、より詳しいことは説明できない」といわれるのでしょうか。納得がいきません。

 三井さんの「すてっぷ館長」からの離任にあたっては、三井さん自身が納得できず、多くの市民からも不信の声が上がり、裁判という結果に至りました。

 ここまで問題がこじれてしまったこと自体、市と財団の対応に不適切な部分があったと考えざるを得ません。

 ましてや、男女平等を進める市の拠点施設で、女性の人格権が侵害される行為があったことは、判決にかかわらず、道義的責任があるのではないでしょうか。

 市や市が政策目的を達成するために設立した財団においては、ただ単に「違法でなければそれでよい」というだけでなく、より高い水準での遵法性や規範性が求められるものと考えます。見解をおきかせください。

 また、判決では、「三井さんの人格権侵害は、少なくとも当時の人権文化部長と、当時の財団事務局長の共同不法行為によるものということができる」と断じています。

 その当事者が今も、豊中市の部長級職にあることについてはいかがなものでしょうか。彼らの責任をどうお考えか、見解をおきかせください。

答弁

 

 

4問目 意見

 2000年にオープンした「すてっぷ」、51億円をかけて建設した豊中市の男女平等をすすめる拠点施設です。

 全国公募の中から迎えた「すてっぷ初代館長」三井さんは、期待に応えて精力的に男女平等の実現をめざして活動しました。女性の地位向上や男女平等が進んでいる北欧の現状を私たちに紹介し、豊中の市民に勇気と元気をあたえる活動をしてくれたのです。

 しかし、6年前の2004年、豊中市は三井さんを一方的に雇い止めにしてしまいました。その背景には、今回の高裁判決が厳しく指摘したように、反対する一部議員を中心とする勢力の動きを恐れた当時の豊中市幹部が、条例制定の見返りに三井さんをクビにする…という恥ずべき行動に出たのでした。

 世の中を変えるためには制度と空気を変えないといけない…といわれます。「すてっぷ」という立派な施設ができ、「男女共同参画推進条例」という制度もできた。しかし、一番肝心なのは、現場での日常的な事業運営です。

 三井さんを失った「すてっぷ」は、暗躍した勢力が望んだ通りに失速。立派な施設をもてあまし、今年からはスペースも半分になってしまいました。男女平等のために行動する市民との関係も修復できていません。

 失った信頼と6年間の時間はあまりにももったいないです。

 豊中市と財団は、上告受理申し立てをしたものの、その理由書はまだ提出していないとのこと。今からでも遅くありません。ただちに、上告を取り消して、この判決を受け入れ、三井マリ子さんに謝罪すべきです。

 これ以上「恥の上塗り」と裁判費用という税金の無駄遣いを止め、まだまだ遅れている男女平等のための施策推進に邁進すべきです。

 それが、人権擁護都市宣言をしている豊中市のとるべき道である、

 との意見をのべ、私の質疑をおわります。

---------------------------------
上記は、大阪府豊中市議会議員 無所属市民派坂本やすこHP に公開された文書の転載です。

←もどる

トップページへ戻る
トップページへ

Copyright(C)ファイトバックの会All rights reserved.