三井マリ子「陳述書」を読んで
灯をともすために

木村昭子(ファイトバックの会@高知)


 2000年9月、全国公募という先進的な形で、応募60余名から三井マリ子さんが「とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ」館長に採用された。女性政策研究家としての豊富な経験をもち、ノルウェー研究の第1人者であり、海外にもネットワークを広げる三井さんの館長としての仕事振りは全国から瞠目され、「すてっぷ」の知名度と評価は大いに高まった。

 バックラッシュ勢力が台頭をはじめた頃の2003年1月、某勢力側から三井さんを誹謗中傷するチラシが配られたり、すてっぷへのいやがらせが続くようになった。更には同勢力と繋がる議員の市議会での「ジェンダーフリー」批判やすてっぷ蔵書攻撃が繰り返されるようになった。「男女共同参画条例」の議会上程を予定していた豊中市は、バックラッシュ勢力と対峙することを避け、バックラッシュ勢力の標的である三井さんを「雇止め」という形で解雇し、問題の終息をはかろうとした。「非常勤」であることを盾にして。その耐えがたい屈辱に三井さんは提訴という形で敢然と立ち向かった。

 この間のいきさつを詳述し、大阪地方裁判所に提出した三井マリ子さんの「陳述書」を読んだ。

 まず許しがたいと感じたのは、数少ない女性管理職の一人である事務局長が直属上司である館長の三井マリ子さんを補佐する職務を放棄し、わが身の保全と市の幹部への追従を選んだということだ。豊中市議会は36人中女性市議6人、その6人中、与党と野党は半分ずつだと聞く。三井館長続投への女性市議の動きはあったというが、市の画策に影響を与えるほどの数ではない。バックラッシュ勢力との取引で、市側は男女共同参画条例の可決成立と三井館長おろしとをトレードしたとしたら、議会と執行部の関係はまさに闇取引のやくざな世界と言うべきだろう。

 そのバックラッシュ勢力の急先鋒である議員が、ある時期から「とよなか男女共同参画推進財団」の評議員になっていたことを「陳述書」で知り、私は仰天した。議員が理事・評議員に任命されるなど、高知ではとても考えられない。ましてバックラッシュ議員を選任したことに理事会の良識を疑う。

 「陳述書」には淡々と書かれているが、三井さんの受けたバックラッシュ勢力からの屈辱の数々は、並みの精神の人間なら完膚なきまでに打ちのめされて当然の仕打ちだ。しかし、三井さんは敢然と立ち上がり、裁判に挑んだ。その強靭な精神力に改めて最大級の敬意を表したいと思う。

 寺沢亮一さんの「行政の仕事は、どこかの誰かの心に、灯をともす仕事」は大好きな言葉の一つである。

 しかし、豊中市の一部管理職は、声の大きな特定市民の前に事なかれと済ますことのみに腐心し、三井さんをスケープゴートにした。しかも、それが『人権』を冠した部のトップと女性の人権を守るべき立場の女性管理職によって行われた事に強い憤りと嘆かわしさを抑えきれない。

 三井さんの戦いはひとり三井さんのためだけではない。女性であるがためにその労働権を不当に犯されている日本中の女性たちの心に灯をともすための戦いでもある。「この裁判が、男女平等社会の推進に一石を投じることになると信じて」(陳述書)、三井さんと共にファイトバックしていきたい。


(出典:「週間新社会」(新社会党機関紙)2006年8月1日号)


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