バックラッシュに屈した「男女共同参画行政」を問う裁判 

遠山日出也(46歳) 非常勤講師

 先日、「館長雇止め・バックラッシュ裁判」を傍聴した。この裁判は、大阪府豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」の館長だった三井マリ子さんが、北欧から要人を呼ぶなどの独創的企画を次々に進めたところ、その仕事ぶりが目ざわりだった「日本会議」などの右翼的勢力が豊中市やセンターに圧力をかけたため、彼女が2004年に解雇された事件を訴えた裁判である。男女共同参画政策を攻撃する「バックラッシュ」は、最近ますます激しさを増しているが、その先駆けとなった重大事件だと言えよう。

 先日の法廷では、男女共同参画推進センター現館長の桂容子さんが証言した。被告の豊中市らは、三井さんと桂さんとを公平な試験で選考した結果、次期館長として桂さんを採用したと主張してきた。しかしこの日の尋問で桂さんは、試験の際、事前に豊中市の部長に「うちには、あなたしかいない」と言われたと証言。彼女の証言によって、試験が形ばかりのものだったことが浮き彫りになった。

 センターの館長は被告側の一職員であり、真実を証言するには困難があったと推測される。しかし彼女の証言によって真実が明らかになり、晴れ晴れとした気持ちになった。

 館長が解雇された背景には、センターの職員の多くが非正規雇用であり、館長さえ非常勤だったこともあるという。雇用の非正規化とバックラッシュを含めた政治反動は、安倍内閣になってますます強まっている。それらに対してもっと早くから真剣にたたかっていれば、と反省させられた一日でもあった。


出典:『週刊金曜日』(2007年3月9日号)



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