深層

すてっぷ館長交代劇の不思議発見

石原 敏(評議員)


 「とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ」(以下、すてっぷ)の前館長Mさんの「雇い止め」裁判が、昨年(2004年)12月17日に」提訴され、8月24日に第5回の審理がありました。書面のやりとり(答弁書、準備書面、証拠説明書)が続いていて実質審理にはまだ入っていません。被告は、豊中市と財団法人とよなか男女共同参画推進財団(以下、財団)です。
 すてっぷの館長さんが昨年4月に交代していたってご存知でしたか。広報紙にも載っていませんでしたよね。財団ができ(00.9)、すてっぷがオープンした2000年には、5月に館長公募、9月に館長にMさん(応募者60人)、11月にはもうすぐオープンと紹介されましたのに・・・。あまりにもひっそりとした交代ではなかったでしょうか(不思議その1)。今回は60人もの応募があった公募をどういうわけかやっていません(不思議その2)。事業課長(プロパー=専門職)は公募だったようですが・・・。

 すべての書面を読んでいるわけではないのですが、すてっぷオープン(2000年11月17日)以来の「業績」について被告豊中市、財団はかなりの評価をしているのです。マイナス評価は見当たりません。例えば「原告はすてっぷの存在感を高めるという立ち上げ段階の配置目的に沿う実績をあげており、更に次年度も原告を非常勤館長として雇用する必要性が認められたので、それぞれ更新することとしたものである」(準備書面25/9)。というように(不思議その3)

 被告は言います。「本件雇用契約は、期間の定めがある明白な契約である。〜有効かつ適法なものである〜」(同上書面)。一年毎の「辞令」の(注)は「上記雇用満了時に任命者から別段の意思表示なき場合は再雇用しないものとする」とあります。公募の広報(00年5月)では「更新の場合あり」です。このただし書きが「形式」かどうかも争点の一つですが、女性が働き続けられる職場づくりを(05.2)、今、女性の就職は・・・(04.2)、就労などで格差や人権侵害が明らかに(03.11)、働いている女性の約3人に1人が仕事の中断期間を経験(02.8)、と広報で連発している被告は働く、働きたい女性にとって「形式」かどうかが心配事であることを認識されておられますでしょう(不思議その4)

 女性(男女共同参画)センターの労働実態について、昨年、「ぐるーぷ・わいわい」が、『女性センターで働く人たちはー非常勤職員が支える女性センター』を発行されました。その中で「女性差別をなくしていく女性センターでなぜ?」という声が寄せられています。「それなりの知識がいり、情報もある。意識もある。それだけで十分に尊重されるべき存在。それを軽い存在として、いつでもクビを切れる状態においておくということ。そして力をつけてきたら、それを生かす前に『雇い止め』という形で終了。〜」という声を、どのように聞き、どのように受けとめるのか、真摯にむきあわなければならないと思います。

 残念ながら、豊中市・財団にこのような姿勢はうかがえません。「〜すてっぷの象徴としての位置づけであって、立ち上げ段階を念頭においた職制であった。したがって存在感を高める役割を担う非常勤館長職は、暫くの間は存置される見込みであったが、数年にわたって引き続き雇用されることは当初から予定されているわけではなかった」(前記書面)。「看板」として利用するだけ利用して切り捨ててはばからない。2000年の公募案内にも明記されていたのだとしたら、「一貫した姿勢」ともいえなくもありませんが・・・。広報の啓発記事とは正反対のことではないでしょうか(不思議その5)

  2002年10月11日のお昼すぎ、市役所の前でビラを受けとりました。6〜7人の女性だけで配布されていたので「何のビラ?」と受けとったのですが、「男女共同参画推進に名を借りた、ジェンダーフリー運動(社会的・文化的性差をなくす運動)のこと、知って?」とありました。「教育(日の丸・君が代)のつぎはジェンダーフリーつぶしか・・・たいへんやな〜」とすてっぷや市の姿勢に共感し、がんばってほしいと思ったものです。というのも「女性らしく」ではなく「自分らしく」(00.1)、これに対する意見への回答(00.3)、など広報での姿勢を評価していたからです。ビラは、すてっぷオープン2年の活動や財団、市の姿勢を批判するものでした。その後、Mさんや推進する立場の人を実名で批判するビラもありました。また、男女共同参画推進条例(03.10.10施行)成立過程での市議会でのやりとりなどもありました。

 豊中市、財団は「館長交代劇」をこれらの動きと関係ない、としています。果たして本当にそうでしょうか。これらの一連の動きを抜きにして今回のことが考えられないのは「市民」に敏感な行政のことからして当然なことだと思うのですが・・・(不思議その6)

 すてっぷの知名度、存在感は高まった、実績もあがった・・・所期の目的は達した。だから「雇い止め」。「女性センターでなぜ?」って思いますよ。これって小泉流のあざとい利用主義と重なってません?




あ・と・が・き  (関係部のみ抜き出し)


 裁判沙汰になっている「すてっぷ」の館長交代劇の背景には何があったのか?情報化の時代とは思えないほど情報が閉ざされています。根っこには、雇用やジェンダー、男女共同参画など「人権」をめぐる問題があります。「6つの不思議」だけでは読み解けませんが、問題の入口にはなるはずです。ちがった角度からの意見もあればぜひお寄せください。



出典:とよなか人権文化まちづくり協会 編集・発行 冊子「じんけん ぶんか まちづくり」第8号(2005年9月)


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