浅倉意見書感想 17

■巨大な壁に挑む足場

仲野暢子(禁煙教育をすすめる会代表世話人)


 私は1970年代以来の男女差別撤廃運動で、三井マリ子さんと一緒に活動した仲間の一人です。マリ子さんは時代と共に告発だけでなく、真の平等社会への前進を求めて、さまざまな新しい活動の分野を切り開いてきました。

 この「男女共同参画推進センター」館長への就任では、彼女の強力なエンジンをフルに稼動させた明るい未来を作るための創造的な活動が大いに期待され、実際彼女は生来の明るい創造性と献身的活動で、新しい地域活動の手本とも言える数々の企画を実現し、地域の女性を勇気付けてきました。

 彼女の「雇い止め事件」については、その手口のあまりの卑劣さと、そしてそれがまかり通ってしまう、相も変わらぬ日本の男性支配社会の理不尽さに、私は怒りに震えながらも、反撃をする手がかりをどう求めていけばよいのか、立ちすくむ思いでした。

 浅倉先生の意見書を読んで、この巨大な壁に挑む足場を一つひとつ示された思いがし、さわやかな感動を覚えました。法律を知ること、それを使いこなすことの重要さは普段の生活では意識しませんが、こういう場合に、とくに女性の側に立った専門家の役割の大きさを痛感します。

 人格権を誰が侵したか、誰が守るべき立場にあるか、形式上の使用者だけでなく、実質誰が決定権を持っているか、使用者は職場環境保持義務を持つという観点など、一般人にも明快にわかるよう説かれていて、読んですっきりします。

 バックラッシュ勢力の野蛮極まりない攻撃について、行政の職員が受ける恐怖にも似た不快さに同情の余地があるとしても、責任は逃れられないと言われることも、納得いきます。しかし、この事件の元凶とも言うべきバックラッシュ勢力について法的追求ができないのは、この裁判の請求目的からしていたし方ないにしても、非常に口惜しく、裁判以外の何らかの方法がないものかと思います。

 そんな意味でも、この裁判は三井さん個人の問題でなく、私たちの社会を陰に陽に支配しているバックラッシュ勢力との戦いであり、また行政への民主主義と法を守らせる要求であることを明らかにしてくれるものだとあらためて思います。

 

■女性の労働権を守る闘い


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