無理が通って道理が引っ込まないように
特集・「男女平等は害悪」の嵐

福間 公子

 三井マリ子さんの訴訟に初期の段階から関わっています。それは、この問題が特に今の時期に、戦後私達が獲得した基本的人権(その中の一つとしての男女同権思想)や民主主義の根底を揺るがす問題だと思うことと、私自身の体験と重なるところがあるからです。後者については、この原稿の目的からは少々外れますから簡単に記しますが、私も女性センター長の職を雇い止めに遭いました。それは、在職中に自分も含む嘱託職員の組合の設立に中心になって動き、設立後委員長に就いたからからです。(不当労働行為ですから勿論、市はそんなこと申しません。1年ごとの契約更新時に、更新はないよという形で、形式的には任命権の内ということ)非は先方にありますから、闘えば地位は保全できたとおもいますが、私はそれをしませんでした。それは理由が2つあって、1つは誕生したばかりの組合を育てるのに優先順位をおくと、市と敵対しないで2足のわらじを履く方が結果が出るのではないかと判断したことと、それまでの1年半でセンター長としての仕事の限界を感じていたからです。私の力量不足もありますが、肝心の市役所の中に男女平等・男女共同参画社会の構築という考えが浸透していかないもどかしさ、無力感がありました。女性センターは作っても、条例も持たない、仮設のような状態が続いておりました。

 それで、三井さんが訴訟に踏み切ったことを知った時にはまず、その勇気に感心しました。自治体相手の裁判は、被告が民間の場合と違って一段と厳しいと予想されます。でも今回はあまりにもひどいし姑息なやり方の連続です。多くの弁護士の方々が力を合わせて立ち向かっているのは、ここで黙っていたら事態はどんどん悪くなるという危機感があるからだろうと思います。


 準備書面についての感想を尋ねられたのに前置きが長くなってしまいました。

 世間の常識からいえば、全くおかしいことでも、裁判では証拠を示して、理詰めで反論の余地の無いようにしなくてはならないため、私たち素人には解りにくいところがあります。80ページもの準備書面は、解説をきいて初めてわかる個所もありましたが、丁寧に読めば、三井さんを標的にしたバックラッシュの動きがよくわかります。

 更新を前提として継続的な職なのに、制度変更を理由に雇い止めにする、しかもその裏で次ぎの館長の手当てを進めていた、それも理事会などの正式手続きを経ずに進めていたという事実については、訴状、7月4日および8月22日の準備書面で十分言い尽くしていると思います。

 それに至った「市のトップの意向」によるもの、そしてそれは「バックラッシュ勢力に屈した」としか考えられない経緯についても、準備書面(8/22)60ページ以下にあるように、2002年7月から2003年10月までの議会の議事録を丁寧にたどることにより、とりわけ攻撃しながら条例に賛成するといった奇妙な終結のし方と、三井はずしの動きを時間を重ねてみることにより、そうとしか考えられない結論が通常なら導かれると思います。関係無いと言い抜けるとしたらどう言い抜けるのでしょうね。

 裁判では是非、意図的に曲解して使われている「ジェンダーフリー」という言葉が正しく使われるよう意見陳述していただきたいと思います。和製英語ゆえのあいまいさがあって、そこが付け狙われたと訴状にありますし、三井さんも誤解を招くといけないので使わなかったということですが、一般的には通常の意味で使われており、私なども定着した言葉かと思っていましたので少々混乱します。

 それも含めて9月27日の準備書面はジェンダーの定義に始まり現在の問題点を短い中にまとめてあり、いい教科書のように思います。


裁判提出書類 http://fightback.fem.jp/saiban_bunsyo_mokuji.html
「訴状」2004年12月17日
「原告準備書面」2005年7月4日
「原告準備書面」2005年8月22日
 年表「被告豊中市の原告排除の動き、豊中市男女共同参画推進条例制定、バックラッシュ攻撃」
「原告準備書面」2005年9月28日
「立証計画」2005年9月28日
(2005年10月現在)

◆◆ ◆◆ファイトバックの会紹介◆◆ ◆◆

館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会
略称ファイトバックの会

 大阪府豊中市は男女平等に反対する勢力に屈して、女性センター館長である三井マリ子さんを雇止めしました。事実上の解雇でした。三井さんはその不当性を世に訴えるために裁判を起こしました。関西の女性弁護士の皆さんを中心に強力な弁護団も結成されました。「館長雇止め・バックラッシュ裁判」は2004年12月17日に提訴されました。
 三井さんの原告代理人は常任弁護団が13人、全体で39人です。
 2005年2月から始まった口頭弁論は11月に第7回目を終わりました。
 裁判への関心の高さから約30の傍聴席は、近畿圏だけでなく全国の支援者も駆けつけて、毎回満席になります。
 傍聴後の弁護士解説付き交流会では、寺沢勝子弁護士から、その日提出された準備書面を分かりやすくユーモアを交えて解説があります。法律を学ぶ学生の勉強の場にもなっています。関心のある人は、口頭弁論の傍聴にお来しください。

 ファイトバックの会は三井さんを応援する会です。現在の賛同人は600名、1,000名を目指しています。
 12月17日には「館長雇止め・バックラッシュ裁判」提訴から1年の記念行事を開きます。
パート1は、寺沢勝子弁護士、紀藤正樹弁護士のお話。パート2は、MASA のサックス演奏を中心に応援メッセージをラップで!!多いに歌い、踊りましょう(スナックとワイン付き)。
来なきゃ損「ファイトバック」どなたも参加自由。チケットは各1,000円です。

 会の1年間の記録は、ホームページ、ブログに掲載しています。情報は満載です。ぜひご一読ください。
●賛同人呼びかけ文と申し込み用紙 http://fightback.fem.jp/yobikake.html
●「訴状」「準備書面」、マスコミ情報はホームページで http://fightback.fem.jp/
●カンパのお願い
 裁判には費用がかかります。ご支援をお願いします。
 1口1,000円(何口でも)
 郵便振替口座:000910-0-137307 ファイトバックの会

連絡先 大野協同法律事務所内
530-0047 大阪市北区西天満2-3-16 絹笠ビル1F
TEL 06-6365-5215 FAX 06-6365-5550

URL : http://fightback.fem.jp/
Email : ご連絡はこちらへ

(出典:『おんなの叛逆』53号 特集・「男女平等は害悪」の嵐2005年12月3日発行)


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