『最終準備書面』感想 8

●「密約」を立証した最終準備書面

宮下 奈津子@ファイトバックの会



 裁判のことを知ったのは提訴から二ヶ月ほどたった頃で、最初からかなり難しいと思っていたのが、「密約」の立証でした。

 政治の舞台で「密約」はヤマのようにあるでしょう。しかし秘密裏にされるからこそ「密約」は密約たりえるのです。それをどう立証するのかが疑問でした。

 訴状や三井さんの『陳述書』の中で、議会で男女共同参画推進条例に対して反対をしながら賛成に起立したということの矛盾を突いているのを見て、なるほどと思いました。

 今回の最終準備書面はこの「密約」についてさらに踏み込んだ記述があり、これによって「密約」の存在については立証されたと私は思います。ここで改めて、なぜこのような密約が存在しえたのかということを考えてみます。

 今回、豊中市でこのような取引が成立したのは、男女共同参画推進条例に賛成し・成立させたとしても北川悟司議員やその勢力の議員たちは、「条例は骨抜きにできる、すぐ改正させられる」という計算があってのことなのでしょう。最終準備書面に明記されていますが、北川議員らは、過去に豊中市の教育現場に介入していくつかを変えてきています。ですから豊中市の男女共同参画行政を自分たちの意のままに変節させることなど、簡単だと思ったのではないかということです。

 他方、本郷和平部長をはじめとする市の幹部たちは、どういうつもりだったのでしょうか。行政はタイムテーブルを作ってその通りことを進めてきます。つまり、市長公約でもあった男女共同参画推進条例案上程を2003年3月にいったん断念したということ事態、行政にとっては異例のことです。その条例案を半年後に制定させると議会で公言していたのですから、2003年9月の条例制定は至上命令だったはずです。面子としての条例の成立、そのためには三井さん排除もいたしかたなかった。宇部市のような条例をつくるわけにはいかない。それは恥だという認識はあったのでしょう。

 条例は2003年9月に成立しています。成立寸前まで、北川議員たちは反対をしているし、議会の外から反対の要望書も出されています。最後まで圧力をかけた上での賛成起立は、この「貸し」の大きさを最大限演出するための動きなのか。いや密約について知っていたのはごく少数で、議会の外の組織には知らされてなかったのかもしれません。

 ここから三井さん排除に向かっての具体的動きは加速します。組織強化に名をかりた非常勤館長の廃止の構想。次期館長の候補者リストの作成。理事長への連絡。来年度予算の整合性獲得。候補者一人ひとりに要請。

 市幹部たちは焦ったでしょう。条例が通った以上、今度約束を履行しなければいけないのはこちら側です。指定管理者制度のことや、財団の寄付行為の変更のことなど頭からふっとんで、いかに三井さんを排除するか頭をひねったことでしょう。

 三井さんを情報から徹底して遠ざけ、すてっぷから山本事務局長という身内だけを市に呼び、作戦を練り実行していきます。話し合いの場所は、喫茶店、ホテル、理事長自宅など、すてっぷをただの1度も使用していないことからも、その密行ぶりがうかがえます。

 さて去る4月、攻撃の急先鋒だった北川悟司氏は豊中市議会選挙で落選しました。

 豊中市はどうするのか。市が三井さんに与えた打撃は計り知れません。人格的にも、業績否定という意味においても。裁判に訴えた後も、市側は、理事、評議員や市民にまで、市が悪いのではないということをうまく言いくるめてきた結果、三井さんの受けた筆舌に尽くしがたい被害について知っている人は多くありません。つまり、豊中市の違法行為を知る市民は少ないのです。

 みずからは守られた地位にありながら、弱い者いじめをする卑劣な行為をした市への仕打ちは、司法が「滅司奉行(司法が自らの役割を放棄し、行政に奉仕する)」しなければ、かならずや市の敗訴という形で表れるはずです。

 が負けたとしても、控訴などするべきではありません。市と財団の弁護士たちはもはやまともな最終準備書面さえ書けなかったのですから。

 市は三井さんに謝罪をするべきです。そしてその後任として強引に館長職につかせた桂さんに対しても。そして取引されたとはいえまっとうな条例が成立していることを活かし、弱体化している「すてっぷ」をもう一度「男女平等の拠点」として再建するべきではないでしょうか。



行政の不正についに「待った」をかけた三井さん

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