「スペースえんじょ」休業にあたって
シェルター理念と館長雇止め・バックラッシュ裁判


2009年6月5日                
上田 美江(全国女性シェルターネット理事)


 「スペースえんじょ」というシェルターを主宰していましたが、一身上の都合で休業いたしますことをお知らせいたします。

 1996年4月、私は、40年間勤務して得た退職金をあてて、暴力から逃れてくる女性たちのために「かけこみシェルター“スペースえんじょ”」を立ち上げました。関西では第1号でした。

 設立当初は、けげんな面持ちで見ていた夫でしたが、膨大な仕事の山と財政的ピンチを見るに見かねて、しだいに最大の協力者となってくれました。しかし、その夫を2004年に亡くしました。その後、母親譲りの膝関節症が起こり、シェルターの活動と運営に責任がもてなくなり、いったん閉じる決意をした、という次第です。

 シェルターは、命からがら逃げてきた女性たちの相談に乗って、彼女たちに安全な場所を提供するだけではありません。入居している部屋のシーツ、タオル、寝具換え、トイレや床、風呂場の掃除などに加え、人の出入りのあった後の洗いもの、提供物資の整理や仕分け、運搬作業など、毎日が肉体労働の連続です。新しい自立生活に向け、役所、弁護士事務所、子どもの学校、不動産屋にも足を運ばなければなりません。

 駆け込んでくる女性は最初の数年こそ年間20組ほどでしたが、すぐ倍増し、2009年3月で、延べ人数430人を超えました。さらに、ここを出て行った女性たちもそれで終わりではなく、その女性たちのアフターケアが必要となる場合が多く、その数と仕事がどんどん増えてきました。

 現在は、私が「スペースえんじょ」を設立した頃と違って、DVに関する情報が多くなり、社会的認識も広まってきました。何より、私たちの運動の成果である「DV防止法」が制定されたことはうれしいことでした。とはいっても、前述したように、個人の犠牲的精神に任せられている点は変わりません。

 全国女性シェルターネット近畿ブロック代表も長年勤めてまいりましたが、今年1月退任いたしました。しかし、理事はまだ勤めており、これまでの経験と蓄積が何らかの形でお役に立てたらと考えております。

 シェルターの理念は「女性の人権と経済的自立の確立」です。女性が安心して安全に生きていけるようになるためには、男性中心主義を変革しなければなりません。

 そのためにも、館長雇止め・バックラッシュ裁判は絶対勝利しなければなりません。判決の日が、支援者の皆様と抱き合って喜びあえる日となりますように!


============ HP編集部より===============


上田美江さんは、現在「館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会」代表。これまでの主な活動は以下です。

第1回「大阪弁護士会人権賞」

上田美江さんの女性解放にかける熱意とDVシェルター活動は米国紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」で大きく報道された。
同記事は、大阪府豊中市男女共同参画推進センターの英語連続講座「英語でエンパワーメント」の教材に採用され受講生に愛読された。身近な女性問題をテーマに英語力をつける教材を探していた三井マリ子館長(講座の企画兼講師)の推薦だった。

全国シェルターシンポジウム 第5回大阪大会2002 実行委員長

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