浅倉意見書感想 6

■裁判を勝利へ導く浅倉意見書

木村民子



 浅倉意見書は、一編のドキュメンタリーのように、隠蔽された過去を克明に暴き出す。それはもちろん、綿密な裏づけ作業に基づくものであるが、当事者さえそのときは認識していなかったかもしれない事実の重みを白日の下に曝している。

 たとえば、「ファックス事件」において北川市議と関係者3人から三井さん、山本事務局長他2名が土曜日の夜に庁舎の1室で「恫喝・罵倒」された件に関して、「これはまさに議員による行政に対する暴力的な威圧的言動の実例である」と一刀両断した。

 そして、
―かえって相手をなだめるために、関係者へのおわび行脚をせよ、と控訴人に指示したり、職員を「処分」し、かつ控訴人に始末書の提出を求めるというような市の対応自体、このような威圧的言動を恐れて屈服したことを示しているのではないだろうか。このような経緯からも、バックラッシュ派の議員による威圧的な攻撃を恐れて、その要因をつくっている(と考えた)市の責任者の内心の動きは手に取るようにわかる。―と述べている。(13p)

 このファックス事件は、豊中市が男女共同参画推進条例を制定した後のことだが、三井さん排斥に拍車を掛けたことは想像に難くない。「男女共同参画条例案には、賛成してやったではないか、三井の件はちゃんとやれよ」という有力議員のダメ押しを受け、豊中市は、戦々恐々として三井排除の画策を進めたに違いない。今後の議会運営に支障があっては困ると考えた豊中市の行政幹部の様子が、私も議員経験者として、よくわかる。

 さらに20pの記述―12月16日に、桂は就任を要請されていた事務局長を受諾するために市を訪問したが、その折、「事務局長は事務が堪能でないと無理ではないか」という不安を述べたため、市側は「具体的な細かい事務は総務課長がするので、心配はいらない」と述べて、桂の不安を取り除いた。常勤職として想定された職務が「事務局長と館長を一本化したものであったとしても、それは、以前の「館長職」となんら変わらないものであったことを示す証拠である。―

 つまり、市は桂さん本人が事務能力に不安を抱えていたのに、事務長までを兼任させることにした。このような選任を第三者に納得させるためには、形式的な選考試験が必要だったのだと、浅倉意見書は誰しも納得できる論理を展開している。しかも、被告や被告側の証人の行動や発言を用いて証左としている点も、見逃せない。

 脇田意見書でも指摘されたとおり、本来なら使用者である市側と財団に、解雇の必要性の「立証責任」があるにも関わらず、それが全くなされない現状では、浅倉意見書の各所の指摘は裁判官も看過できないのではないか。それだけに高裁では浅倉意見書の一言一句を綿密に検討してほしいものだ。

 さて、浅倉意見書では「人格権侵害」という観点からも論じられている。「人格権」とは、引用すれば「身体・健康・自由・名誉など人格的属性を対象とし、その自由な発展のために、第三者による侵害に対し保護されなければならない諸利益の総体」で、民法でいう「個人の尊厳」ということ。この「人格権」を侵害されたと三井さんが原告として訴えた場合、被告の市や財団は、どのように反論してくるのだろうか。私のような素人考えでは、あれだけの論証がされているのだから、絶対に反証は不可能と思うのだけれど。暴力を受けた被害者がケガをして殴られたというのに、加害者があれは殴っていないと言い逃れができるだろうか。

 さらに浅倉意見書は使用者側の職場環境保持義務まで言及している。すなわち、使用者は労働契約上の義務として、労働者に対して、人格を尊重されながら働くことができるようする職場環境保持義務を負っているのだそうだ。三井さんが市や財団から、適切な職場環境を維持してもらっていたか? 否である。三井さんが職務を全うできるように市が協力したか? 否である。三井さんが外部のバックラッシュの攻撃を受けたときに、守ってくれたか? 否である。三井さんが心身共に疲弊したとき、適切な健康管理を行ったか? これも否である。事実は明白に物語っている。

 私は、この正義感にあふれ、かつ論理的・法的根拠が明確に示されている浅倉意見書が、必ずや裁判を勝利に導くことを信じたい。

 かつて、住友電工勤務の二人の女性が勤務条件や待遇に関しての男性との差別について会社を相手どって訴訟を起した。だが1審敗訴、日本の裁判に幻滅した彼女たちは積極的に国連の女性差別撤廃委員会や国際労働機関に訴えた。それが効を奏したのか、2003年の12月、2審での大阪高裁で彼女たちが「和解」を勝ち取ったのは記憶に新しい。その和解金が「働く女性の裁判基金」として三井さんへの裁判支援金としてつながっている。

 そして今、2008年12月、さあ、私たちも結審を控えて、高裁に向けてアピールしよう。浅倉意見書を一人でも多くの人に読んでもらい、この裁判への支援者を増やそう! 満員の人で傍聴席を埋めよう!



■平易な表現に感謝の念がわいた

浅倉「意見書」は女たちへの大きな希望/ご注文はこちら


トップへ戻る
トップページへ

Copyright(C)ファイトバックの会All rights reserved.